企業が続々と仮想通貨投資を発表する裏側と存在するリスク
- 仮想通貨関連
- 2025.06.16.
- ニュース
- 企業が続々と仮想通貨投資を発表する裏側と存在するリスク
仮想通貨の認知度が高まり、価格が高騰するにつれ、有名企業が仮想通貨を保有するケースが増えてきました。
なかでもストラテジー社やテスラ社がビットコインを保有することに意欲的であり、保有先駆者として知られています。
特にストラテジー社は財務戦略の一環として2020年8月からビットコインを購入し続け、2025年5月現在のビットコイン保有量は576,230BTCだと言われています。
つまり世界最大級のビットコイン保有量を誇っている企業だということです。
しかしここにきて、仮想通貨投資を発表する企業が大幅に増えつつあります。
世界の上場企業のおよそ228社によって、合計82万BTCが保有されていると報道されています。
このように企業がビットコインなどの仮想通貨を保有することや、購入計画を発表する裏側にはどのようなことがあり、リスクはないのでしょうか。
実は米大手の仮想通貨取引所コインベースが2025年6月12日付の月次レポート内で、このリスクなどについて触れています。
企業による仮想通貨保有やその背景に加え、コインベースのレポート内容、そして注意すべき小規模企業による大規模な仮想通貨投資についてもご説明しましょう。
ビットコイン保有企業が増えた背景
冒頭で紹介したようにビットコインは現在、世界の上場企業228社によって82万BTCが保有されています。
画像引用:coingecko
どうしてこれほどビットコインを保有する企業が増えたのかというと、ひとつはビットコインの認知度が高まったこと、そしてもうひとつに価格が大きく高騰していることが挙げられます。
しかしその背景には、2024年12月15日に開始された米国における仮想通貨に関する会計基準の変更があります。
変更されるまでの会計基準では、仮想通貨の市場価値が購入時より上昇しても、その利益分を財務諸表に反映することができませんでした。
そのため投資家やステークホルダーが、企業の財務状況を正確に評価できなかったわけです。
一方、変更後の会計基準では仮想通貨価格の下落時だけでなく、価格が上昇した際にそのことを財務諸表に反映することができるようになりました。
つまり投資家やステークホルダーが、企業の財務状況を正確に評価できるようになったわけです。
コインベースが仮想通貨保有企業の変化とリスクを指摘
米国における仮想通貨に関する会計基準の変更によって、仮想通貨を保有する企業にも変化があり、システミックリスクにつながる可能性があると米大手の仮想通貨取引所コインベースが2025年6月12日付の月次レポートで発表しています。
システミックリスクとは、特定の金融機関や市場が機能不全となった場合、その影響が他の金融機関や市場だけにとどまらず、大きく波及して金融危機を起こすことを指します。
画像引用:coinbase
これまでは主要事業がある企業が仮想通貨を保有
ビットコインなどの仮想通貨を保有する企業、例えばストラテジー社は米のソフトウェア企業で、ソフトウェアだけでなく、クラウドを活用したデータ分析ツールを提供している企業です。
テスラ社はイーロン・マスクCEOが「世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速させること」を目標に掲げ、電気自動車や太陽光発電、エネルギー貯蔵製品の設計・製造・販売などを手掛けています。
すなわち、これまで仮想通貨を保有してきた企業は主要事業があり、それとは別にビットコインを投資対象として組み入れてきたということです。
近年は仮想通貨の保有を目的とした企業が増加
最近ではビットコインなど仮想通貨の蓄積を主な目標とした事業を構築している企業が出現しています。
特にこのような企業は、仮想通貨を買収するための資金調達手段として株式や債券を発行していると言われており、ほとんどが純資産を上回る価格で取引されているとも言われています。
資金繰りのために仮想通貨を売却する可能性を指摘
コインベースは月次レポート内で、仮想通貨を企業が保有することによってリスクも生じる可能性があることを指摘しています。
例えば仮想通貨保有企業の株式が低調となった場合、その企業は債務を返済するために保有していた仮想通貨を売却することで危機を乗り切ろうとする可能性があります。
売却する仮想通貨ボリュームが大きければ、その仮想通貨に売り圧力をかけることになってしまいます。
もちろんその企業の株価が下落しているかどうかは、株価をチェックしていれば分かることでしょう。
しかし通常の資金繰りのために仮想通貨を売却するとすれば、それはオープンにされないため、誰にも予想できないタイミングで仮想通貨価格が突然下落することになります。
こうなると仮想通貨市場が非常に不安定になりかねないと指摘しています。
ただし、ビットコインの保有量が多いストラテジーやマラソン、Riot Blockchain、Galaxy Digital Holdings、テスラなどについては、2029年後半から2030年初頭まで満期を迎えることがなく、さらに借入比率が妥当な水準である限りは仮想通貨を売却せずに済む可能性が高いと述べています。
小規模企業の大規模な仮想通貨投資は株価操作の可能性
コインベースは月次レポート内で、大手企業のビットコイン大量保有はまず問題ないだろうと説明しています。
では注意すべき点は何なのでしょう。
実は仮想通貨メディアであるThe Blockが2025年6月13日に、小規模企業が身の丈に合わないほどの大規模な仮想通貨投資を発表しているのは株価操作ではないかとの記事を発表しています。
画像引用:The Block
The BlockはVanEck社のデジタル資産責任者であるMatthew Sigel(マシュー・シーゲル)氏に取材した記事を掲載しています。
その記事によると、時価総額が小規模の企業であるにもかかわらず、新しい主要投資家もオープンにしないで時価総額の何十倍にも上る仮想通貨財政構築を宣言している場合、株価上昇を狙った試みである可能性が高いと述べています。
そしてその例として、数社が取り上げられています。
まずシンガポールに拠点を置く、ナスダック上場企業でもあるトライデント・デジタル・テック・ホールディングスが取り上げられています。
トライデント・デジタル・テック・ホールディングスの時価総額は約1,600万ドルですが、最大5億ドル(710億円)ものXRP財政構築計画を発表していました。
また自動車・ホスピタリティ企業であるウェーバス・インターナショナルについても言及しており、同社は時価総額1億ドル未満であるにもかかわらず、最大3億ドルのXRP財政計画を公表していることも例として紹介しています。
他にも時価総額1億ドル未満であるクラッソーバー・ホールディングスが最大で5億ドルにも上るソラナ財政構築を発表したこと。
アフィリエイト企業である米SharpLink Gamingが4.63億ドル相当のETHを購入したことで、イーサリアム財団に次ぐ世界第2位の保有企業になったと発表したことなどを取り上げています。
このような動きは、ストラテジーがビットコイン大量購入で成功しているのを模倣したものとみられ、これらの発表が株価の上昇につながっているとは言い難く、発表したことで株価が大きく下落しているケースもあります。
そしてThe Blockの記事はマシュー・シーゲル氏の言葉として、投資判断をする際には企業実態と発表された内容に整合性があるかどうかを検証する必要があると述べていることを紹介し、記事を結んでいます。
まとめ
ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格が上昇し、存在感を示しつつある現在、企業が仮想通貨に投資することは当然のことかもしれません。
しかし単なる株価上昇のために仮想通貨への投資を装うことは、仮想通貨そのものの価値を貶めることにもつながっていきます。
またビットコインなどを大量に保有している企業が、現時点では一気に売却する可能性が低いとはいえ、万が一大量に売却されると、それだけで仮想通貨市場は大混乱に陥ってしまう可能性もあります。
今後はこれらの企業の財務状況にも注意を払っておいた方が良いのかもしれません。